ひとつのアンテナで複数の衛星に対応する!

注意 下記の説明は直径2mを越えるアンテナでポーラーマウントを利用しての多衛星化について述べています。小型アンテナ用には容易に設定できるDiSEqC制御の回転装置が利用可能ですので、小型アンテナの場合はこのページの内容は不必要です。

1台のアンテナで複数の衛星に対応できると便利です。あるいは、アンテナ設置場所に限りがある場合は、これが唯一の対応方法かもしれません。しかし、一般的には受信対象の衛星ごとに独立したアンテナを設置するほうが全体のコストを抑えられるだけでなく、アンテナの動作も安定し、切替も迅速にできることから、1台のアンテナで複数の衛星に対応しようとすることは余りお勧めいたしません。

静止衛星の周回周期とクラークベルト

通信衛星の大部分は静止衛星です。1日に地球を1周する速度で地球の回りを回っているため、地上からは静止しているように見えるわけです。衛星が地球を周回する速度は衛星と地球との距離で決まり、周回する高度が低くなれば地球を周回する時間が短くなり、高くなれば周回に要する時間が長くなります。ですから、地上から見た時に静止して見える「静止衛星」なら、どれも高度は一定で、地表から36,000Kmの距離となります。また、静止衛星は一定の速度で周回しなければなりませんから、その軌道は、高度が変化する楕円ではなく、地球と中心を同じくする完全な円でなければなりません。
クラークベルトちょうど1日で地球の周囲を周回する衛星であっても、その軌道が北極から南極へというような軌道であれば地上からは静止して見えません。従って、静止衛星とするには、「クラークベルト」と呼ばれる赤道上空36,000kmの円形軌道上において、地球の自転と同じ方向に周回する必要があります。
以上からわかるように、ひとつのアンテナで複数の衛星に対応するには、このクラークベルトに沿ってアンテナの方向を変化させれば良いのです。

アンテナの回転軸は地球の自転軸に平行

アンテナ回転軸の角度 アンテナの方向を変えるためにはアンテナを回転させなければなりませんが、その軸と地球の自転軸を平行にします。もし、赤道直下ならその回転軸は水平となり、軸の方向は正しく南北となるはずです。また、北極や南極の極点ならその軸は垂直に立つことになります。つまり垂直を基準として、90から緯度を引いた数だけ回転軸の角度を傾ければ良いのです。また、軸は常に南北方向で、北半球では軸の上側が真北に、南半球では真南に傾ければ良いことが判ります。
では、赤道や極点以外で実際にアンテナを設置する際は、どのようにして地球の自転軸と平行にすればよいのでしょう。HHマウントやポーラーマウントのようなアンテナの方向を回転できるような構造を持つアンテナを例に説明します。
アンテナ回転軸の角度まず、アンテナの仰角を適当な高さに設定して回転させると、アンテナの仰角は回転と共に変化します。そこで最も仰角が大きい位置で回転を停止した状態で、マウントも含めたアンテナ全体の方向を真南に向けます。こうすることにより、アンテナの回転軸が真北に向けて傾斜することになります。次に、アンテナを真南に向けアンテナの仰角を「90度からアンテナ設置場所の緯度を引いた角度(90-緯度)」に設定します。使用アンテナがHHマウントやポーラーマウントなら、これでアンテナの方位の回転軸は地球の自転軸と平行になります。
クラークベルト上の静止衛星はすべて赤道上空に位置します。ですから、アンテナの回転軸が地球の自転軸と平行なら、アンテナを回転させると赤道で真上を仰ぐのと同じ方向にアンテナを向けることができます。

重要な補正角度

アンテナの補正角度 もし、衛星が地球から無限大の距離にあればアンテナの回転軸と地球の自転軸を平行にしておけばそれで良いのですが、実際には衛星は36,000kmしか離れていません。ですので、アンテナの設置場所の緯度に応じてクラークベルトに向けるための補正角度が必要となります。
この補正角度は、設置場所の緯度によって異なり、赤道上なら0度で、極地で最大となります。オービトロンのアンテナでは、この補正角度の設定が容易となるようアンテナ取付部を回転させ、補正角度用の目盛りを緯度に合わせるだけで完了します。補正角度は設置場所の緯度により変化し、赤道上なら0度、極地で最大となります。アンテナ設置場所の真南に衛星があるとして、その仰角を求めると、南中での仰角 = 回転軸の傾斜角度 - 補正角度 となります。

ポーラーマウントとAZ/ELマウント

アンテナの回転軸を地球の自転軸と平行に設定したり、前項で説明された補正角度も設定できるようにデザインされたマウント(アンテナ基部)をポーラーマウントと呼びます。また、H-Hマウントというのはポーラーマウントの一種で、一般的なポーラーマウントが100度前後の範囲しか回転できないのに対し、東の地平線(Horizon)から西の地平線までカバーする方式のことです。
これに対し、仰角と方位をそれぞれ個々に設定や駆動できる構造のものをAZ/ELマウントと呼びます。現在最も一般的なマウントの方式です。固定式のアンテナだけでなく、2軸を回転させてアンテナの方位と仰角を設定させるアンテナもこれで、地球局の大型アンテナの殆どはこの方式を利用しています。